確定申告で節税が可能になる障害者控除という項目をご存じでしょうか。障害者控除を適用することで、所得税や住民税の控除を受けることができますが、複数あるのでどのケースに当てはまるのか、迷う人も少なくありません。
そこでこちらでは、最も控除額が大きくなる同居特別障害者とはどのような状況なのかについて見ていきます。
障害者控除とは、確定申告を行う本人、または家計を同じくして生活している配偶者や扶養親族に障害がある場合に受けることができる控除です。障害がある人はないひとと同じように働いて収入を得ることが難しく、病院の受診や介護などの支出も発生するため、税制面で優遇されるようになっています。
確定申告をする際、実際の所得から配偶者控除や扶養控除、寄付金控除、医療費控除といった様々な項目で控除を行い、残った金額に対して所得税が課税されます。そのため、控除額を増やすことで課税金額が減少し、同じ所得でも納税額を安く抑えることができるという制度です。
そして、障害者控除も確定申告の控除として適用することができ、所得税と住民税を減額できます。また、相続税の申告でも、障害者控除の適用が可能です。障害者控除には3つの種類があり、それぞれ控除額が異なります。
従って、申告をする際には控除額の大きい障害者控除の要件を満たしているのか確認する必要があります。
では、具体的に障害者控除にはどのような種類があるのでしょうか。令和5年現在の時点では、障害者、特別障害者、同居特別障害者の3つに分かれています。障害者は税法上で用件が定義されていますので、判断に迷ったときには税務署や税理士事務所で確認するのが確実です。
大まかに言えば、精神上の障害により事理弁識能力を欠いている人、児童相談所や精神保健指定医等の判定により、知的障害者とみなされた人、障害者手帳を発行されている人、戦傷病者手帳の交付を受けている人などが該当します。
特別障害者とは、障害者の中でも身体障害が1~2級、精神障害が1級、重度の知的障害者、複雑な要介護を必要とするなど症状が重い人です。さらに、扶養親族が障害者で、本人もしくは障害者ではない扶養親族と同居している人が同居特別障害者となります。
障害者の種類によって、所得税、住民税それぞれ控除額が異なってきます。障害者の場合、控除額は所得税が27万円、住民税が26万円です。特別障害者になると所得税が40万円、住民税が30万円となり、同居特別障害者の場合は所得税が75万円、住民税は53万円の控除となります。
上記でも述べた通り、同居特別障害者の定義は障害者の中でも最も厳しい内容になっています。確定申告をする場合、現状よりも控除額が少ない障害者控除を選択しても問題はありません。しかし、うっかり本来よりも控除額の大きい種類の障害者控除を適用してしまった場合には、過少申告加算税が課せられる可能性がありますので注意しましょう。
特別障害者と同居特別障害者は、障害の度合いで言えばどちらも同じです。従って、まずは障害者に該当するか、特別障害者に該当するかの判断をしなければなりません。そして、特別障害者と同居特別障害者の違いは、本人や扶養親族と同居しているかどうかという点です。
例えば、1年目に特別障害者と同居して2年目に別居した場合、1年目は同居特別障害者控除を適用し、2年目は特別障害者控除を適用するということになります。当初は自宅で介護をしていたものの、老人ホームの空きが見つかり、施設に入所して住所を別にした場合などがこちらのケースです。
なお、同居特別障害者の場合、同居するのは本人でなくても問題ありません。両親と別居して、子供(本人)が生活費を負担して両親を扶養に入れている場合で、父母の一方が特別障害者であれば、子供(本人)は同居特別障害者としての申告をすることができます。
家計を同じくしていても、老人ホームに入所した場合などは同居特別障害者の対象とはなりません。しかし、同居していなくても同居特別障害者の対象となるケースもいくつかあります。例えば、老人ホームに入所する場合でも、それが長期的な入所ではなく自宅に戻ることを前提とした短期入所で、実際に2~3か月入所してから戻ってきたケースならば、同居を常況としているとみなされるため、同居特別障害者として申告することが可能です。
ただし、短期入所の予定であったものが結果的に長期化したケースなど、判断に迷う場合には、確定申告前に一度相談をしておいた方が良いでしょう。一方、病気などで長期入院をしている場合には、たとえそれが1年近い期間であっても同居特別障害者控除の対象となります。
入院は治療目的の滞在ですので、病院を生活の拠点にしているとは判断されません。当該年度ずっと入院している場合でも、同居特別障害者として確定申告を行いましょう。
同居特別障害者とは別に、同居老親等という項目もあります。ここで注意しておきたいのが、両者の「同居」の定義の違いです。どちらかと言えば同居老親等の方が厳しい条件になりますので、両方適用する場合には違いをきちんと理解しておきましょう。
同居老親等は、対象となる老人扶養親族と同居している場合に受けることができる控除です。ただし、扶養親族の範囲や同居の要件が通常よりも狭められています。まず、同居老親等における老人扶養親族とは、本人またはその配偶者の親や祖父母などの直系尊属を指しており、伯父や叔母などは該当しません。
また、同居老親等における同居は、本人またはその配偶者との同居に限定されています。同居特別障害者の場合は、本人ではなく扶養親族が同居していても対象となっていましたが、こちらのケースでは他の扶養親族と同居している場合には適用を受けることができませんので、注意しましょう。
このように、現実的に現在同居していないケースでも、同居特別障害者に当てはまっていることがあります。控除額が大きくなるほど節税効果も高くなりますので、条件に合致しているのであれば、特別障害者ではなく同居特別障害者として申告手続きをしましょう。
確定申告の時期は税務相談の予約が取りづらいため、早めの確認がおすすめです。